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IPL治療とピコトーニングの作用機序や効果の違い

篠原秀勝

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篠原秀勝(しのはら ひでまさ)

IPL治療とピコトーニングは、いずれも肌へ穏やかに作用する照射治療です。痛みや熱感は軽微であり、ダウンタイムがほとんどないことが共通するといえます。そのため「使用機種は違うが、同じ効果を期待できる施術」と誤解する方も少なくありません。

しかし、IPL治療とピコトーニングの作用機序・効果には違いがあり、治療目的にあわせた選択が必要となります。

複数の肌悩みに対応できるのがIPL治療の強み

IPL治療は一般的なレーザー(単波長レーザー)と異なり、フラッシュランプを光源とする照射治療です。波長域は約500〜1200nmと幅広いことから、シミやソバカスなどの色素性病変だけでなく、小ジワや毛穴の開き、赤ら顔など、さまざまな症状に適応します。

IPL治療の痛みは輪ゴムで弾かれた程度であり、比較的穏やかな照射治療となります。ダウンタイムもほぼ無いか、数日マイクロクラスト(薄い膜のようなカサブタ)が生じる場合もありますが、メイクでカバーすることは可能で、テーピング等の必要はありません。

一方、満足度の高い仕上がりのためには施術回数が必要な点や、悪化の可能性があるため肝斑への照射が難しい点はIPL治療のデメリットといえるでしょう。

「1度でさまざまな肌悩みを改善」の本当の意味

IPL治療の最たる特長は、約500〜1200nmからなる幅広い波長域です。毛穴の開きやシミ・ソバカスだけでなく、ハリ低下やヘモグロビン(毛細血管)を原因とする赤みなどを改善へと導きます。IPL治療は一般的な肌悩みのほぼすべてに、アプローチが可能といえるでしょう。

単波長レーザーの場合、症状に応じてレーザー機器の変更が必要です。一方、IPL治療の場合は、対象病変に応じたフィルターを変更するだけで治療をおこなうことができます。

例を挙げると、シミなどのメラニンをターゲットとするのであれば515・560nmのフィルター、赤みなどヘモグロビンがターゲットであれば590nmのフィルターを選択します。そのため複数の症状が混在する場合、症状に合わせた波長のフィルターに切り替え、照射を重ねる必要があります。

IPL治療は「1度で幅広い美肌治療が可能」と説明する医療機関も多く見られます。しかし各症状に対し正確な診断と、適切なフィルターを選択・使用してこその「幅広い治療」であることを理解する必要があります。

肝斑治療が可能な点がピコトーニングの強み

ピコレーザーとは発振時間が1兆分の1秒という非常に短いレーザーを照射できる医療機器です。一般的なレーザーと異なり、衝撃波によりメラニンを微細に粉砕します。発振時間が短いため、ターゲット以外の組織へ熱が広がらず、炎症後色素沈着の発生リスクが低いとされています。

ピコレーザーによる照射法には、シミやホクロに対するピンポイント照射(ピコスポット)と、低出力のピコレーザーを顔全体に照射するトーニング照射(ピコトーニング)の2つがあります。ピコトーニングはIPL治療と同様に比較的穏やかなレーザー治療であるため、満足度の高い仕上がりのためには定期的な照射を繰り返す必要があります。

ピコトーニングは、波長1064nmと730nmによる出力で照射をおこないます。1064nmの波長では、肝斑・くすみ・炎症後色素沈着の治療が可能です。一方、730nmの波長は他のレーザーで除去できなかったうすいシミや、顔全体に散らばるソバカスの治療に適しています。またADMの治療では、色素により1064nmと730nmの波長を使い分けます。

ピコトーニングの最たる特長は、IPL治療では禁忌とされる肝斑への適応です。またIPL治療を含む他のレーザー治療とくらべ、痂皮形成が少ないとされています。一方、皮膚に生じる症状は複雑であり、肝斑のある部位に老人性色素斑やADMが混在するケースも少なくありません。安全性と有効性の高い治療のためには、正確な診断と適切な種類のレーザー・波長の選択が重要といえます。

ピコトーニングとレーザートーニングの比較

低出力の照射治療にはピコトーニングのほか、レーザートーニングがあります。レーザートーニングとは、低出力でレーザーを顔全体へ均一に照射する照射治療です。出力が低いレーザーのためメラニンを産生するメラノサイトを刺激せず、メラニンを破壊します。

これまでレーザーは肝斑を悪化させるため、禁忌とされていました。しかし近年、QスイッチYAGレーザーを低出力、かつ均一に照射することが可能となり、肝斑改善の症例が数多く報告されています。

ピコトーニングとレーザートーニングは、いずれも肝斑・くすみ・肌質改善・炎症後色素沈着などに適応した照射治療です。一方、レーザートーニング後は小さな痂皮、一時的なニキビが発生するケースも見られます。ピコトーニングとレーザートーニングに迷った際は適応はもちろんのこと、費用やダウンタイム、治療回数などを考慮することが大切です。

ピコトーニング レーザートーニング
パルス幅 ピコ秒(1兆分の1秒) ナノ秒(10億分の1秒)
波長(レーザーの種類) 1064nm/730nm(Nd:YAGレーザー) 1064nm(QスイッチYAGレーザー)
光の作用 光音響作用(衝撃波)メラニンを細かく破壊 光熱作用メラニンを破壊
適応症状 肝斑・シミ・そばかす・くすみ・毛穴の開き・ハリ 肝斑・シミ・そばかす・くすみ・毛穴の開き・ハリ
痛み・ダウンタイム 弾かれたような軽微な痛み 弾かれたような軽微な痛み・軽い熱感
費用(全顔1回) 15,000〜40,000円程度 1回10,000〜30,000円程度

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