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HIFUの“コケ”に関する考察

森大(もり だい)

書いた人

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森大(もり だい)

背景

「HIFUはコケるって聞くのでやめておきます。」
「HIFUってコケるんですよね?SNSでよく見ます。」
「友達がHIFUでコケたって聞いたので怖いです。」

ある時から診察でこのような声を聞くことが増え、その後も衰えることなく続いています。

正直なところ、現場で照射を行っている身からするとあまりそういう感覚はありません。
(考えて照射しているからかもしれませんが、ランダムに打ってもなかなかコケない気がします)

しかしお客様自身は固定観念を持っていることも多く、その場で「ほとんどコケることは無いですよ」とお話ししてもほとんど逆効果。“この人は信頼できない”と僕を否定的に見るきっかけになる事すらあります。

僕の方もそのうち諦めて、
「そうですよね、コケたら嫌ですし他のメニューにしましょうか。」
と、本来HIFUが向いている方に対しても他のメニューを提案することが増えました

考えが定まった誰かを説得するのは、ほとんどの場合において良い結果を導きません。
(今読んでいるあなたもムッとしているかもしれません)

何も専門家の僕が正しいと言いたいのではありません。
SNSで繰り返し浴びる情報を正しいと感じるのは当然のことですし、実際にコケたと感じる方が存在することも確かです。

しかし改めて考えてみると、果たして医師としてその姿勢で良いのか。
本来は一番いいと思うメニューをお勧めするべきでは?
悩ましいところです。

医療現場であれば“正しいこと”を突き通すことが圧倒的に正しいのですが、美容の現場は情緒的な価値も大きいため、“正しいこと”が必ずしも正しいとは限りません。

以上のことからやはり現場で説得するのは双方にとってメリットが小さいと思うのですが、正しい知識を記事にまとめておくことには一定の価値があるだろうと思いました。

今回はHIFUとコケに関連する論文をピックアップし、その結果をもって考察していこうと思います。

HIFUのコケに関連する論文

HIFUのコケに関する論文はいくつかあり、評価は2つの方向性に分かれます。

①ボリュームタイトニングの“効果”がある
②コケさせる“合併症”がある

そもそもHIFUは熱タイトニングを起こす治療なのですから、効果も合併症もあると考えるのが自然です。論文上はどのような評価になっているのか、見ていきましょう。

今回4文献ピックアップできました。

*全て英語論文を和訳しているので、多少不自然なところがあってもご容赦ください。

顔面深部真皮および皮下組織に対する高強度超音波治療の合併症(2014)

2011年11月4日から2012年10月9日までにDuke Aesthetic Centerで治療を受けた39例全例を対象。

そのうち1例においてpseudomelolabial fat atrophy(偽性メロラビアル部脂肪萎縮)という合併症を認めました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25207762/

***

これは偽性と書かれている通り、明確に脂肪委縮に伴うものではないとされています。

既存のフィラーがヒアルロニダーゼ注入で溶けた経過ではないかと、後続文献で記載されたようです。
(紛らわしい…)

経皮的マイクロフォーカス超音波による合併症:症例シリーズおよび文献レビュー (2018)

Ultherapy(ウルセラ)治療後に、直接関連すると考えられる重篤な有害事象を発症した5例を、著者らの複数施設から後ろ向きに集積した症例シリーズです。

5例ではMFUSを1回施行した後に、以下のような有害事象がみられました。

  • 水疱形成
  • びらん/潰瘍
  • 皮膚または皮下組織の浮腫
  • 萎縮
  • 皮膚壊死

MFUSによる重篤な有害事象はまれではあるものの、実際に起こり得て、かつ過小報告されている可能性があるとしています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29154457/

***

重篤な萎縮性変化は起こり得るが、頻度はかなり低く症例報告レベルという見方が妥当ですね。

可視化機能付きマイクロフォーカス超音波:有害事象と、その後のフェイスリフトへの影響に関するシステマティックレビュー (2025)

マイクロフォーカス超音波(MFU-V)治療後に生じる治療関連有害事象(TRAEs)を整理し、さらに将来的なフェイスリフト手術にどのような影響を及ぼし得るかを明らかにするため、システマティックレビューを行いました。

19本の論文、計506例のデータが抽出されました。

最もよくみられた有害事象は、一過性の浮腫、紅斑、施術後疼痛でした。

重篤な治療関連有害事象は非常に限られており、皮下組織萎縮を1例認めました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39625163/

***

506例を含む19論文において、明確な皮下組織萎縮は1例のみ

SNSでは“コケる”という話が目立つ一方、医学論文上では明確な脂肪萎縮の報告はかなり限られていると言えます。

3次元デジタル画像評価を用いた新規マイクロフォーカス超音波による顔面タイトニングの評価:前向きランダム化比較試験(2024)

本研究ではマイクロフォーカス超音波機器について、安全性とタイトニング効果を評価することを目的としました。

20名の女性が対象。
中顔面・下顔面・顎下部について左右をランダムに割り付け、一方をデバイスで治療しました。
使用したトランスデューサーは、M4.5、D4.5、M3.0、D3.0です。

治療前後で左右を比較し、標準化写真、3次元(3D)ボリューム評価、Bモード超音波による皮膚厚測定、皮膚の光学的パラメータを評価しました。

3か月後のフォローアップでは、20名中14名、つまり70%で、臨床的に有意な顔面タイトニング効果が認められました。

3か月後の下顔面の平均容積変化を3Dで定量評価すると、

  • 治療側:−0.29 mL
  • 対照側:+0.42 mL

であり、両者の差は統計学的に有意でした(P < 0.05)。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38100073/

***

MFU照射による下顔面のボリューム減少は客観的な3D測定でも確認されている。

ただし、そのボリューム減少が脂肪萎縮によるものかどうかは、この研究単独では断定できない

という結果です。

HIFUのコケに関連する考察

材料を集めたところで、考察していきます。

4文献の結果を統合すると以下の通りです。

  • ●HIFUのボリュームタイトニングは3D測定を含めて実証されている。
  • ●しかしその理由が脂肪萎縮によるものかは定かではない
  • ●合併症として脂肪萎縮は報告されているが、極めて稀で症例報告レベル。

***

ここからは私個人の意見を述べます。

脂肪萎縮(つまりコケ)の報告は実際にあるので、稀とは言え無視するわけにはいきません。
また、個々の不安感についても無視することはできません。

一方、私がHIFUが向いていると考える方に関して、ご本人が不安だからという理由で100%迎合するのもどうかと思います。

「コケることは思いのほか少ないので、少し前向きに考えても良いと思いますよ」
というくらいは伝えるべきでしょう。
(“説得”にならない範疇で)

なせHIFUはコケると噂になるのか

もう1つ考えておきたいと思います。

SNSや噂では、なぜこれほどまでに“HIFUはコケる”という情報が多いのでしょうか?
科学論文との整合性が全く取れていません。

考えられるのは

論文にならない程度のコケがそれなりに存在する
②コケは発生していないが、コケたように感じる

というパターンです。

①についてはあり得ますね。
論文に掲載するほどではなかったと。

客観評価ではコケの基準に満たないが、主観レベルでコケたということは考えられます。

②については例えば以下の様なケースがあります。

頬骨上のボリュームを抑えようと照射
→ボリュームは減ったが、頬骨が際立つ (高さは減っている)
視覚的にコケて見える

これはかなり複雑な理論で、起こさないように調節するにはかなり経験がいります。

臨床的なコケをどう防ぐか

論文上は極めて稀なのに実際には起きる“コケ”。
“臨床上のコケ”とでも言いましょうか。
これは防ぐべきです。

多くの場合

●適応
●打ち方

のどちらかに問題があると考えられます。

本来はヒアルロン酸が向いている (適応)
コケている人に何も考えずに照射 (打ち方)
タイトニングすべき場所とすべきでない場所を区別しない (打ち方)

などが考えやすいですね。

私自身よく適応と打ち方を考えており、「コケた」と言われたことは記憶にありません。
しかし「一度きり」になってしまった方に何の問題も生じていないとは言い切れませんね。

引き続き“臨床上のコケ”については気に掛けながら、良い適応の方には適切な説明を行うことが重要でしょう。

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