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【HIFUの闇】国が危険と断言した理由とHIFUを受ける際の注意点

篠原秀勝

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篠原秀勝(しのはら ひでまさ)

近年エステハイフによる深刻な神経障害や火傷が問題となり、2024年6月には、厚生労働省が「医師以外のハイフ施術については医師法違反にあたる」との通知を出しました。今回はエステハイフと医療ハイフの違いや問題点、エステハイフの危険性・有効性について医師が解説します。

厚生労働省が「エステHIFUは危険」と発表した理由

「ハイフ(HIFU)」とは、高密度の超音波エネルギー(高密度焦点式超音波)を利用した照射施術です。医療ハイフにおいては、加齢によって衰えが生じる真皮層・皮下組織(脂肪層)・SMAS(筋膜層)までエネルギーを選択的に届けます。組織に吸収された超音波は強い熱エネルギーに変換され、軽いヤケドが組織に起こります。そのヤケドが自然治癒する際に老化した組織が再生し、たるみ・シワなどトータルエイジングケアをおこなうことが可能です。

医療ハイフによる皮膚への作用は以下の通りです。

真皮層への作用
真皮層には肌のハリや弾力を担うコラーゲンやエラスチンなどの繊維が存在し、それらは加齢とともに減少・劣化してしまいます。ハイフによって真皮層へ熱エネルギーを届けることで、線維芽細胞が活性化し、コラーゲン・エラスチンなどの皮膚弾性物質の産生が促されます。
皮下組織への作用
皮下組織へ吸収されたハイフによる熱エネルギーは、脂肪細胞を破壊し代謝によって体外へ排出を促します。脂肪を原因とするたるみや、通常のダイエットでは難しいとされる部分痩せにも高い効果をもたらします。
SMAS(筋膜層)への作用
皮下脂肪層の下には表情筋(表情を作る筋肉)が存在し、この筋肉は比較的強固な1枚の膜様組織に覆われています。この膜をSMASと呼びます。SMASが緩むことで、表情筋も下垂するため、ハイフの熱による凝固作用と繊維組織の再生によりSMASを引き締めることで筋肉層のリフトアップを狙います。

ハイフによる強力な熱エネルギーは皮膚の奥深く、SMASまで作用します。顔面には重要な神経が複雑に走行し、安全性の高い施術をおこなうためには顔面解剖学等の医療知識が必要であり、米国で初めに販売が開始された際には、解剖学に詳しい形成外科医のみが扱うべきではという、議論もあったといわれています。

このようにハイフ治療は確かな効果を発揮させることができる反面、潜在的に様々な危険性を抱えている治療であり、知識と技術を有する医療従事者のみが慎重に扱うべき施術です。

エステサロンにおいても、痩身やリフトアップを謳ったハイフ施術は広く普及していますが、上述のように強力な熱を発生し、組織に火傷を生じさせる場合には医療行為に該当するため、エステで無資格者がそのような施術をおこなった場合には、医師法違反となり逮捕される場合があります。

したがって、ヤケドは起きない出力設定である旨の説明がなされているエステサロンも多いようですが、低出力であれば残念ながら本来ハイフマシンが発揮するリフトアップや痩身効果は得られません。問題となるのは、本来医療用とすべき高出力を使用できる機器を使用してしまう、あるいは施術者に使用させてしまう場合です。一時的な神経の麻痺、ヤケド、色素沈着など種々のトラブルが発生しています。

2024年6月、厚生労働省は「医師以外がHIFUの施術をおこなえば、医師法違反にあたる」と各都道府県へ通知しました。

”用いる機器が医療用であるか否かを問わず、HIFU を人体に照射し、細胞に熱凝固(熱傷、急性白内障、神経障害等の合併症のみならず、HIFU 施術が目的とする顔・体の引き締めやシワ改善等も含む。)を起こさせ得る行為(以下「本行為」という。)は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第 17条に違反すること。”

引用:厚生労働省「医師免許を有しない者が行った高密度焦点式超音波を用いた施術について」(PDF)

この通知により、エステハイフ施術禁止の流れが強まったといえるでしょう。

実際に集められたエステHIFUによる危害例

火傷・腫れ・出血・蕁麻疹

医師以外がハイフによる施術を行うことは、危害が生じる恐れがある行為と指摘。医師が医療法に基づき、医療提供施設で実施することと明記した。都道府県などは違反行為に関する情報があった場合、施術の停止を勧告するなどし、悪質なケースは刑事告発を念頭に警察と連携するよう求めた。

消費者庁および国民生活センターに寄せられるエステハイフによるトラブルの多くは「火傷」「腫れ」「出血」「蕁麻疹」が挙げられます。エステハイフの低出力照射では細胞変性が起こらないため、出力を上げた結果、火傷を引き起こすケースも少なくありません。また、医療資格がないため皮膚の状態を見極めることができず、出血や蕁麻疹等を引き起こすといったトラブルも報告されています。

一時的なしびれや神経麻痺

顔面にはさまざまな神経が複雑に走行しています。なかでも、顔の感覚を脳に伝える脳神経最大の神経「三叉神経」がハイフエネルギーで傷害されることで、神経麻痺やしびれが生じるケースも少なくありません。

効果を実感できない

ハイフによるリフトアップや痩身効果は本来、強力な熱エネルギーがもたらす細胞変性によるものです。これらは医療行為となるため、エステハイフによる効果はどんなに高額であっても”温熱によるスキンケア”の範囲に留まります。そのため、ハイフによる「リフトアップ」や「部分痩せ」など、医療ハイフと同等の効果を想定していた場合、効果がないと感じる方が多いようです。

HIFU施術はリスクや副作用を伴う立派な医療行為

ハイフはメスやニードル(針)を使わず、照射のみで施術をおこなうことができます。そのため、エステ感覚で受ける方も多く、また医療機関においても”安心安全”をアピールする広告も多くみられます。

たしかにハイフは外科的な治療法と比べると、非常に負担の少ない施術といえます。しかしハイフは強力な熱エネルギーにより真皮層・皮下組織・SMASに軽度のヤケドを与える施術です。細胞に変化をもたらす医療行為となり、さまざまなリスクや副作用を伴うといえるでしょう。

安全性の高いハイフをおこなうためには肌の状態を見極めたうえでの照射と、神経麻痺や出血などの合併症を未然に防ぐ知識と技術が必要です。これらのことからハイフによる施術は、万が一、偶発症が発生した場合、正しい対応・処置が可能な医療機関のみが扱うべき治療法です。

エステサロンのHIFU訴求表現に注意

エステサロンの広告などでみかけるハイフの訴求表現は「薬機法違反」であるケースも少なくありません。以下のようなハイフの訴求表現をおこなうエステサロンには注意が必要です。

皮膚組織の変化や効果の訴求はNG

  • ハイフで若返り
  • ハイフによるリフトアップ効果
  • ハイフでシワ改善など

若返り」や「アンチエイジング」といったワードは医療広告ガイドラインに反しています。また、エステハイフはコラーゲン産生や脂肪細胞破壊など、細胞に変化をもたらす効果を訴求すると薬機法違反となり処罰対象となります。

※無資格者による医療ハイフマシンの取り扱いは医師法違反となります

安全性・効果保証や医療ハイフとの誤認表現

  • 痛みがなくすぐにリフトアップ
  • 安心安全で確実な痩身効果
  • 医療分野でも活躍!など

「痛みがなく安全」「絶対に痩せる」など、安全性や確実な効果の訴求は医療広告ガイドライン違反となります。また、医療ハイフと同等の照射マシン(効果)とすると薬機法違反となり、処罰対象です。

危害を受けた場合はすみやかに医師へ相談

エステハイフを受け神経麻痺や火傷などのトラブルが生じた際は、すみやかに皮膚科などで診察を受けましょう。また施術面だけでなく金銭トラブルが生じた場合、早期に国民生活センターへ相談することが大切です。

効果だけでなく安全性にもこだわる当院のHIFU施術

エステサロンに限らずハイフによるトラブルは、医療知識や技術不足によって生じます。当院では顔面解剖学に詳しい医師によるカウンセリングと、臨床経験の豊富な施術者のみがハイフ施術を担当いたします。

当院のハイフは3D画像診断「ベクトラ」による術前術後の経過管理など、医療行為として安全性・有効性を追求した施術をおこなっております。また万が一のトラブルの際も、医師が責任をもって迅速に対応いたします。そのほかハイフへの不安や質問については、お気軽に当院までご相談ください。

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