【製剤編】ヒアルロン酸_製剤の特徴と選び方
ヒアルロン酸治療では、「どこに入れるか」「どのくら入れるか」といった デザインや設計 が最も重要です。
そして、その設計を支えているのが、ヒアルロン酸製剤そのものの特徴 です。
— ヒアルロン酸製剤は、どれも同じなのか?
— 何が違うのか?

1.世界中にあるヒアルロン酸製剤
ヒアルロン酸製剤のメーカーは世界に 100社以上 あるとされており、その中で国際的に流通しているメーカーは約 20社、製剤の種類は 100種類以上 存在すると言われています。
さらに、硬さや弾力性などの 物性の違い によって、同一メーカー内でも製剤は細かく分類されています。
ただし、各国によって承認されている製剤は異なります。
日本において、厚生労働省の承認を受け、美容目的で使用できるヒアルロン酸注入製剤を提供しているメーカーは、現在2社のみです。
● ガルデルマ社(スイス):レスチレン®シリーズ
● アラガン社(アイルランド/米国):ジュビダームビスタ®シリーズ
なお、美容用ヒアルロン酸注入製剤として、世界で初めてFDA(米国食品医薬品局)の承認を取得したのは、
ガルデルマ社のレスチレン®シリーズ です。
現在では、部位別・目的別に製剤が細分化され、治療の選択肢は大きく広がっています。
2.ヒアルロン酸製剤の特性による分類
ヒアルロン酸製剤は、製薬メーカーごとに異なる 「性質」 を持っています。
レオロジー特性の評価に用いられる用語はメーカーによって多少異なりますが、臨床の現場では、以下の要素で理解するとイメージしやすくなります。
● 硬さ(Firmness)
外力が加わった際に、どれだけ形を保てるかという性質
● 弾力性(Elasticity)
圧が加わった後に、元の形に戻ろうとする力
● 凝集性(Cohesiveness)
製剤がまとまりとして存在し、崩れにくい性質
硬さのある製剤は、顎・フェイスライン・こめかみなど、骨格ラインを形成する部位に適しています。
一方で、柔らかい製剤は、唇や目の下など、繊細な調整が求められる部位に向いています。
動きのある部分や、頬などの柔らかい組織には、弾力性のある製剤を選択することで、自然な表情の動きに追従しやすくなります。
注入後の状態を安定して維持するためには、凝集性 も重要な要素です。
凝集性の高い製剤は、狙った位置にしっかりと留まりやすく、リガメントへの注入や、骨膜上でのボリューム補填など、支柱としての役割が求められる場面で力を発揮します。
一方で、凝集性の低い製剤はなじみやすく、浅い層での凹凸の改善や、質感の調整などに適しています。
近年では、このようなヒアルロン酸製剤ごとに異なる「レオロジー特性」 をより深く理解したうえで、部位や目的に合わせて製剤を選択するという考え方が、治療設計の主流になりつつあります。
3.ヒアルロン酸製剤の構造を決めるものとは
「ヒアルロン酸」と聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか。
多くの方にとって身近なのは、化粧水や美容液に含まれている保湿成分としてのヒアルロン酸かもしれません。
では、化粧品に含まれるヒアルロン酸と、注入治療に使われるヒアルロン酸は、何が違うのでしょうか。
注入治療に使用されるヒアルロン酸製剤は、皮下に注入された後も一定の形を保つ必要があるため、「架橋(クロスリンク)」 という工程によって安定化されています。
この架橋には、ヒアルロン酸分子同士を結びつける 「架橋剤」 が用いられ、いわば 接着のような役割 を果たしています。
一般的に、架橋剤の量が多くなると、製剤には以下のような特徴が現れます。
● 硬さ・弾力性・凝集性が高くなる
● 体内で分解されにくくなり、持続期間が長くなる
● 吸水性が低下し、むくみが出にくくなる
さらに、単に架橋剤の量だけでなく、架橋剤の種類や、架橋の仕方、ヒアルロン酸の分子構造 によっても、ヒアルロン酸製剤の性質は大きく変わります。
この部分こそが、ヒアルロン酸メーカーごとの特徴や個性が現れるポイントです。
いずれにせよ、製剤の構造や性質を理解したうえで、部位や治療目的に見合ったヒアルロン酸製剤を選択することが、自然で安全なヒアルロン酸治療には不可欠です。
4.「架橋剤」の安全性
現在、ヒアルロン酸注入製剤の多くには、BDDE(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル) が架橋剤として使用されています。
BDDEは、ヒアルロン酸分子同士を結びつけることで、体内で一定期間、形状やボリュームを維持するために用いられています。
長年にわたり世界中で使用されてきた背景には、以下のような特性があります。
● 化学的に安定しており、製剤として扱いやすい
● 製造過程でほとんどが反応し、最終製品中の残留量が極めて低く管理されている
● 長期間にわたる臨床使用実績があり、重大な毒性報告が非常に少ない
このため、現在使用されている架橋剤の中では、比較的安全性の高いものとして広く用いられていると考えられています。
一方で、ヒアルロン酸製剤は、「安全性が高い=リスクがまったく存在しない」という治療ではありません。
まれではありますが、以下のような反応が報告されています。
● しこりや硬結が長期間残る
● 慢性的な炎症反応が持続する
これらは、架橋剤そのものの毒性というよりも、ヒアルロン酸の
● 分子量
● 架橋の度合い
● 製剤構造や体内での分解速度
といった要因が関与している可能性があると議論されています。
現在主流であるBDDE架橋ヒアルロン酸については、適切な製造管理のもとで作られた製剤を選択し、適切に使用する限り、実際のリスクは非常に低いという点が、国際的にもおおむね共通した認識となっています。
5.ヒアルロン酸製剤ごとに実は異なる副作用・合併症
ヒアルロン酸注入による副作用・合併症は、大きく 3つ に分類されます。
① アレルギー
② 感染症
③ 血行障害
このうち、医師の手技(テクニック)に強く影響を受けるのは②と③です。
感染症や血行障害は、解剖の理解や注入技術、手順管理によってリスクを大きく左右されます。
一方で、①のアレルギー反応は、必ずしも手技に依存しないという点に注意が必要です。
実は、アレルギー反応の発生率は、ヒアルロン酸製剤ごとに大きく異なることが知られています。
手技(テクニック)に関する詳細は、「技術編」や他のコラムで改めて述べますが、
ここでは アレルギー反応、特に近年注目されている「遅延型アレルギー(遅発性炎症反応)」 について触れておきます。
遅延型アレルギーとは、注入直後ではなく、数週間〜数か月後に
● 腫れ
● 浮腫み
● 赤み
などが現れる反応を指します。
このような反応は、
● 体調不良
● 強いストレス
● 睡眠不足
● ワクチン接種後
といった 免疫状態が変化するタイミング をきっかけに生じるケースが多いとされています。
その発生メカニズムは、現時点では完全には解明されていません。
ただし、注入手技そのものが直接の原因である可能性は低く、
● 架橋の度合い
● 分子量
● 製剤構造
といった、ヒアルロン酸製剤自体の性質が関与している可能性が高いと考えられています。
実際、メーカーや製剤の違いによって、遅延型アレルギーの報告頻度に差があることが指摘されており、製剤選択の重要性があらためて注目されています。
海外では使われていても、日本では未承認の製剤が多いのは、安全性・品質基準が世界的に見ても非常に厳しいためです。
◆まとめ
ヒアルロン酸製剤は、メーカーや製造方法によって特性が異なります。
その「性質 」を理解し、部位や目的に合わせて最適な製剤を選ぶことが、自然な仕上がりにつながります。
そして、製剤の品質を担保する日本の厳しい承認基準が、治療の安全性をさらに支えています。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
最も長い歴史を持つヒアルロン酸製剤のひとつであるレスチレン®シリーズ に、新しい製剤が加わりました。
それが
レスチレン®リファイン およびレスチレン®ディファイン です。
従来のレスチレンシリーズはNASHAテクノロジー により製造されていますが、
今回の新シリーズはOBテクノロジー(Optimum Balance) という新しい製造技術が採用されています。
これは、
● なじみの良さ
● 自然な動きへの追従性
をより重視した設計のヒアルロン酸製剤です。
通常、ヒアルロン酸のモニター割引は「当院を初めて受診される方」を対象としていますが、
今回の OBテクノロジー製剤の導入にあわせて、当院に通ってくださっているリピーターの方にも、
「OBT製剤モニター50%オフ」の形でご案内いたします。
口元の細かな変化や、頬のボリューム低下が気になる方は、治療の選択肢のひとつとしてご検討ください。
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