【デザイン・設計編】ヒアルロン酸_理論を知った先に、なぜセンスが問われるのか

1.人はなぜ、人を美しいと感じるのか
誰かの顔を見て、思わず「美しい」と惹きつけられる。その背景には、偶然ではない「一定の法則」が隠されています。
かつての人々はその法則を解き明かそうと、比率や曲線、対称性といった幾何学的な視点で美を定義してきました。黄金比やオージーカーブといった美の尺度は、いわば「美しさの正体」を論理的に解明しようとした人類の探求の記録です。
感覚という目に見えないものを、確かな理論として整理する。こうした「知的枠組み」があるからこそ、私たちは迷うことなく、あるべき「整った状態」を目指すことができるのです。

2.幾何学的尺度が果たしてきた役割
― 「点」から「面」、そして「立体」へ ―
かつてのヒアルロン酸治療は、刻まれたシワや窪みを「埋める」ことこそが正解だと信じられていました。しかし、部分的な修正に固執するあまり、顔全体のバランスを崩してしまう――私たちは美容医療の進化とともに、その残酷な事実に直面することになります。
例えば、ほうれい線を消すことだけに熱を上げ、過剰な注入を繰り返したとしましょう。確かに【シワ】という線は見えなくなります。しかしその代償として、口元だけが異様に膨らんだ、どこか人工的で不自然な顔貌を招いてしまうことがあるのです。
こうした失敗を避け、真の美しさに到達するために重要視されるようになったのが、顔全体の構造を評価する「幾何学的・比率的な尺度」の活用です。
-
・ 顔全体の分割比率:三分割や五分割による、黄金のバランス
-
・ 立体的な前後関係:横顔のEラインやセファロ分析に基づいた奥行き
-
・ 曲線と直線の関係:オージーカーブが描く、若々しく滑らかな連続性
-
・ 左右差の調和:違和感を与えないための、許容されるべき非対称性
これらは、ヒアルロン酸治療における「羅針盤」です。私たちが「整っている」と感じる美しさは、多くの場合、この精密なバランスの中に収まっています。
現在、製薬メーカーが推奨する最新のプロトコルも、このバランスを乱す【たるみ】に焦点を当て、全体をリフトアップすることで自然な若返りを図る手法へと進化しました。これによって、私たちは「不自然にならないための安全なルート」を手に入れたのです。
3.それでも、美しさは尺度だけでは説明できない
しかし、臨床という現場に身を置き続けていると、時に不思議な現象に出会うことがあります。幾何学的な尺度や比率には、必ずしも当てはまらない。それなのに、強い魅力を放つ顔に、私は数多く出会ってきました。
比率は理想的ではない。左右差も確かに存在する。横顔のラインも、教科書通りではない。それでも、多くの人の目に「美しい」と映り、見る者を惹きつけてやまない。
この事実は、一つの真実を雄弁に物語っています。
「美しさとは、数値や比率だけで決まるものではない」ということです。
幾何学的な「正解」という狭い枠組みの中には収まりきらない、目には見えないけれど確かに存在する『魅力』という深淵な領域がある。数値の整合性を超えたところにある、その人だけの輝きに触れること。それこそが、美容医療という道の本当の本質ではないかと私は考えています。
4.盲目的な理論の先に現れる“不自然さ”
― Overfilled Syndrome という警鐘 ―
ヒアルロン酸治療において、理論に忠実であろうとするあまり、かえって不自然な顔貌に至ってしまう――。近年、この状態は Overfilled Syndrome(入れ過ぎ症候群) と呼ばれ、世界的な社会問題となっています。
■「正しい施術」が、なぜ不自然さを生むのか
マニュアル通りの場所に、決められた量を、淡々と注入する。それは一見、非の打ち所がない「正しい」施術に見えるかもしれません。しかし、その結果として生まれるのは、人が本来持っているはずの個性が塗りつぶされた、どこか無機質な違和感を漂わせる顔です。
■ 量の問題ではなく、思考の停止という「設計の破綻」
この症候群の本質は、単に注入量が多すぎたという単純な失敗ではありません。目の前の患者様の顔を見ず、理論や注入コードを思考停止のまま当てはめてしまったことによる、「設計上の破綻」なのです。
■ プロトコルは、あなたへの「最終解答」ではない
製薬メーカーが提示するプロトコルは、注入に不慣れな医師でも一定の成果が出せるよう設計された、再現性と安全性のためのガイドラインです。それ自体は素晴らしいツールですが、そこには「製品をより多く、効率的に使用してほしい」という商業的な思惑があることを忘れてはいけません。
それはあくまで「平均的な正解」であり、あなたという唯一無二のキャンバスに対する、最適解ではあり得ません。
「理論としては正しい。しかし、人の顔としては美しくない」
理論を積み重ねた末に現れるこの矛盾こそが、Overfilled Syndromeの正体です。理論は、外さないための「道具」であって、そこに到達すること自体が「ゴール」であってはならないのです。
5.センスとは何か
― 経験という「記憶」が導き出す最適解 ―
■ センスの正体は「経験のデータベース」
私たちが考えるセンスとは、生まれ持った才能や曖昧な直感ではありません。ましてや、比率や理論から逃げるための言い訳でもありません。
それは、研鑽を積んだ医師たちが数えきれないほどの顔を診て、積み上げてきた「膨大な経験のデータベース」そのものです。私たちがチームで共有しているのは、単なる手技ではなく、数万の症例から導き出された「魅力の検索能力」なのです。
■「不完全な美しさ」を知っている強み
私たちは『スキンリファインクリニック』として、多くの「顔」に向き合ってきた歴史を持っています。その中で一つの真実に至りました。
「美しさの正解は、決して一つではない」ということ。
教科書的な黄金比から外れていても、圧倒的に美しい人はいます。左右非対称であっても、人を惹きつけてやまない魅力的な顔があります。幾何学的な「完璧さ」よりも、人間らしい「不完全さ」の方が豊かに映る瞬間を、私たちは誰よりも知っているのです。
■ 教科書ではなく、あなただけの正解を
施術における私たちの判断基準は、計算式だけでは決まりません。
「この骨格なら、理論値より控えめにした方が品が出る」
「この雰囲気なら、あえて左右差を残した方がその人らしい」
こうした高度な判断は、脳内にストックされた膨大な症例データと、目の前の患者様を瞬時に照合することで生まれます。私たちが向き合っているのは、無機質な物体ではなく、一人ひとりの人生や歴史が刻まれた「個性というキャンバス」です。
理論を土台としつつも、理屈には縛られない。熟練したドクター陣の審美眼を信じ、最終的には「その人にとって自然かどうか」で判断する。この繊細なバランスの上に初めて、誰かの真似ではない、“その人だけの美しさ”が成立すると私たちは信じています。
関連のブログ記事一覧
- 2022/06/10
- 【シワ改善注射】ヒアルロン酸注入とボツリヌストキシン注射の違い
- 2022/05/12
- ヒアルロン酸注入と組み合わせられるさまざまな美容施術
- 2022/07/11
- 【院長篠原の本気!】ヒアルロン酸注入 メスを使わずここまで変化〜形成治療編〜
- 2016/05/05
- Vista-shapeヒアルロン酸注入。直後から半年以上リフトアップ。痛みもありません。
- 2014/05/10
- ヒアルロン酸注入で思うところ
ヒアルロン酸についてもっと詳しく
Special Reccomend

施術の様子や各院の最新情報はSNSをチェック!
ACCESSclinic
休診日:なし
銀座・数寄屋橋交差点不二家の看板が目印
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル5F
銀座駅B10出口から徒歩約0分、有楽町駅A0(東側)出口から徒歩
約1分、日比谷駅A1出口から徒歩約2分 銀座・数寄屋橋交差点
不二家の看板が目印のビル
休診日:水・日
吉祥寺駅北口徒歩1分 駅前ロータリー、アーケード入口手前
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-12 小野山ビル3F









