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ヒアルロン酸注入で使用される製剤の種類と持続期間

篠原秀勝

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篠原秀勝(しのはら ひでまさ)

ヒアルロン酸注入は、シワ改善や額、鼻筋の形成など幅広い施術が可能です。その理由は、ヒアルロン酸製剤の種類の多さにあるといえるでしょう。今回はヒアルロン酸製剤のおもな種類や効果の持続期間と、当院で使用しているヒアルロン酸製剤カイセンス®について解説します。

ヒアルロン酸注入の持続期間は約6ヵ月〜2年

ヒアルロン酸注入の持続期間は、製剤の種類や注入部位によって異なります。持続期間をより長く保つためにはヒアルロン酸製剤の品質による違い、メーカーや製品選びが最も重要ですが、どのように注入するかという医師の技術によっても差が生じます。

ヒアルロン酸注入の持続期間を決める要素

①メーカーによる違い

ヒアルロン酸注入に使用するヒアルロン酸製剤はさまざまな国のメーカーから実に多くの種類が販売されており、それぞれ持続期間が違います。

また製剤原価もメーカーによって大きく異なり、厚生労働省やFDA(アメリカ食品医薬品局)・CEマーク(EU加盟国安全基準条件)・MFDS(韓国食品医薬品安全処)など、国の承認を受けたヒアルロン酸製剤は一般的に高額になります。これらは臨床試験を行い、一定の安全性と有効性が認められた製剤といえるでしょう。

一方、国の承認を受けていない安価なヒアルロン酸製剤は、各メーカー責任の下に製造・販売されており、持続期間や安全性、有効性も各メーカー基準とされています。

②架橋の量や高分子・低分子による違い

架橋とは、ヒアルロン酸製剤の体内での分解・吸収を遅らせるための添加剤のことです。架橋が少ないほど柔らかく、多いほど硬いヒアルロン酸製剤となり、効果の持続期間も長くなります。小ジワ治療から鼻筋やアゴの形成まで、ヒアルロン酸注入施術の汎用性の高さは低分子や高分子などのヒアルロン酸の性質と量、そして架橋の方法によりもたらされます。

低分子や高分子などのヒアルロン酸の分子量や配合比率などは、現在も各メーカーが研究を行い、新しい製品が続々と開発、販売されています。しこりやアレルギー・拒絶反応などの合併症の原因はいまだ特定されていませんが、BDDEと呼ばれる架橋剤の量は合併症の発生率と比例関係にあることが示唆されています。

③注入する部位による違い

ヒトの皮膚は外側から表皮・真皮・皮下脂肪の3層から成り立ち、その下に筋肉、さらに下には身体の土台である骨があります。ヒアルロン酸製剤の持続期間は、注入する深さや治療目的、製剤種類によって異なるといえるでしょう。

ヒアルロン酸製剤を注入する深さと持続期間

「深さ」とはヒアルロン酸製剤を注入する皮膚の層のことです。ヒアルロン酸注入の持続期間は、各皮膚層への注入部位と製剤の種類によって異なります。

特許技術処方のヒアルロン酸製剤カイセンス®

下記は当院で使用するヒアルロン酸製剤「カイセンス®」による持続期間です。カイセンス®は特許技術により少ない架橋で高い粘弾性・リフトアップ力をもち、幅広い症状に適応できます。CEマーク取得済みであり、従来のヒアルロン酸製剤と比べ持続期間が長いヒアルロン酸製剤とされています。※水光注射のみ専用のヒアルロン酸製剤を使用

表皮〜真皮浅層

ヒアルロン酸は体内の保水物質とされ、肌のうるおいやハリ・弾力を保つ役割を持ちます。しかしヒアルロン酸は加齢と共に減少し、小ジワや毛穴の開きを引き起こします。水光注射はヒアルロン酸製剤を顔全体に浅く注入することで、肌のうるおいやハリ感を改善に導く治療法です。

目的 乾燥肌や小ジワ、開いた毛穴の改善
治療法 水光注射などで無架橋および低架橋の専用ヒアルロン酸製剤を、表皮から真皮浅層に広範囲で注入
持続期間 約3週間

真皮上層

柔らかいタイプのヒアルロン酸製剤を注入することで、ボリュームアップや加齢・乾燥による目元や口もとの浅いシワなどを改善し、ふっくらとなめらかな肌に導きます。

目的 浅いシワの改善
治療法 カイセンス®プレサイスによる注入(柔らかい)
持続期間 約3〜6ヶ月

真皮深層

唇の形やバランス、加齢による深いシワなどにはやや柔らかいヒアルロン酸製剤を使用します。当院で使用するカイセンス®は、垂直抗力(押したときに戻ろうとする力)が高く、リフトアップ力に優れているため、少量でも効果を発揮できることが特長です。

目的 涙袋形成・口唇形成・深いシワ・中等度のくぼみ改善
治療法
治療法 カイセンス®ディファインによる注入(やや柔らかい)
持続期間 約1年

皮下脂肪層・骨膜上

シワやたるみは皮膚の衰えと思われがちですが、これらのエイジングサインは加齢による骨の吸収が大きく影響します。皮膚の土台ともいえる骨格のボリューム減少が引き起こすシワやたるみを改善するためには、骨吸収により凹みが生じた部位の骨膜上にヒアルロン酸注入を行う施術が必要です。

目的 頬や輪郭のリフトアップ
治療法 カイセンス®ボリュームによる注入(やや硬い)
持続期間 約1〜2年

定期的なヒアルロン酸注入で効果をキープ

ヒアルロン酸注入による効果を持続させるためには、完全にすべて吸収されたら、また注入するというのではなく、2〜3割減ってきたという段階で継ぎ足していくのがおすすめです。3か月〜半年などの途中経過で減り具合をみて、少量ずつ追加注入を受けられるとよいでしょう。

氷のかけらをイメージしていただくとわかりやすいですが、大きなキューブと小さなかけらでは、氷の溶ける速さが異なります。注入量が多い方が吸収されるのに時間がかかりますが、いたずらに多く注入してしまう事は仕上がりが不自然な印象になるだけでなく、血行障害などの重篤な合併症のリスクにもなるため、おすすめできません。

ドクター選びは慎重に

ヒアルロン酸注入は注射のみで行うため、簡単で気軽な美容医療として紹介されることも多い施術です。しかしその仕上がりはヒアルロン酸製剤の品質や、医師の技術力により大きく左右されます。粗悪な品質のヒアルロン酸製剤や未熟な技術による注入では、皮膚表面の凸凹、ヒアルロン酸製剤が青く透けて見えるチンダル現象、組織壊死や失明という重篤な合併症も起こりうるため、その選択には注意が必要です。

また、安価なヒアルロン酸注入には何らかの理由があります。ヒアルロン酸製剤メーカーや医師の専門分野と臨床経験などを確認し、安全性の高い治療を受けることが大切です。

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