【医師解説】シミ取りレーザー後に「前より濃くなった」のはなぜ?プロが明かす「炎症後色素沈着」の真実と、絶対に失敗しないアフターケア
こんにちは。スキンリファインクリニックの篠原です。
前回のコラムでは、一見そっくりな「肝斑(かんぱん)」と「ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)」の正しい見極めがいかに重要か、というお話をしました。
正確な診断がつき、いざ「ピコスポット」などの適切なレーザー治療に進んだ後、多くの患者様が直面する大きな不安があります。それが、「レーザーを当てたのに、数週間後に前よりシミが濃くなってしまった……」という現象です。
「せっかく高いお金を払って治療したのに、失敗したのでは?」とパニックになってしまう方も少なくありません。しかし、これは美容医療において避けては通れない、極めて重要な「ある肌反応」なのです。
今回は、シミ取り治療の成否を分ける「炎症後色素沈着」のメカニズムから、トラネキサム酸などの内服薬の本当の役割、そして当院がおすすめする意外なアフターケアの裏ワザまで、診察室のリアルなトーンでお話しします。
1. シミ取りの最大の落とし穴「炎症後色素沈着(PIH)」とは?
レーザー治療でシミを強い出力でパチンと弾いた後、1週間ほどでカサブタがポロっと剥がれ、下から赤みのあるキレイなピンク色の新しいお肌(一過性の白斑化やピンク肌)が顔を出します。
ここまでは大成功のプロセスです。しかし、問題はその後に起こります。
確率3割?珍しくない「第2のシミ」
カサブタが剥がれてから2週間〜1ヶ月ほど経った頃、キレイになったはずの場所に、再び茶色いモヤモヤとした色が出てくることがあります。これが「炎症後色素沈着(PIH:Post-Inflammatory Hyperpigmentation)」です。
文献やデータにもよりますが、一世代前のQスイッチレーザーはもちろん、最新のピコレーザーであっても、約3割程度の確率でこの炎症後色素沈着が起きると言われています。これはレーザーの照射ミスでも、シミの取り残しでもありません。レーザーという「熱刺激(炎症)」を受けたお肌が、守りの反応として一時的にメラニンを過剰に作ってしまうことで起こる、いわば「一時的なアザ・傷跡」のようなものです。
スタッフが経験した「数年間消えなかった火傷と色素沈着」の恐怖
実は当院のスタッフも、過去に他院でフォトフェイシャル(光治療)を受けた際、不適切な出力によって強めの火傷を負ってしまった経験があります。 その後、猛烈な炎症後色素沈着が起こり、ハイドロキノンなどの強力な美白剤を塗り続けても、完全に消えるまでに数年単位の長い時間がかかってしまいました。
このように、炎症後色素沈着は「一度起きてしまうと非常に厄介で、長引くと数年は消えない」という大きなリスクを孕(はら)んでいるのです。だからこそ、私たちは経過診察(治療1ヶ月後など)の際に、「一度はカサブタになってキレイに剥がれましたか?」と必ず確認し、今出ている影が「元のシミの取り残し」なのか「炎症後色素沈着」なのかを厳密に見極めています。
2. 肝斑・シミ治療における「内服薬」の本当の役割
炎症後色素沈着や肝斑のリスクをコントロールするために、私たちはよく「トラネキサム酸」や「ビタミン剤」などの内服薬(サプリメント)を処方します。
ここで多くの方が勘違いされているのが、「この薬を飲めば、今あるシミが消える」と思ってしまうことです。
内服薬は「シミを消す消しゴム」ではない
診察室で「お薬を飲んでいたけれど、全然シミが変わりませんでした」と言って、内服をやめたがってしまう患者様がよくいらっしゃいます。 はっきりとお伝えしておきますが、内服薬は「今あるシミを消す魔法の消しゴム」ではありません。
内服薬(特にトラネキサム酸)の本当の役割は、お肌の奥にあるシミ工場(メラノサイト)の暴走や慢性的な炎症を、「内側からブロックしてこれ以上シミを作らせない(活動性を抑える)こと」にあります。
スキンケアの「気合い」が入っている人ほど薬が効かない?
「毎日ちゃんとお薬を飲んでいるのに、肝斑も色素沈着も濃くなる」という方の大半は、お薬を飲みながら、日々の洗顔やスキンケアで相変わらずお肌を「擦る・叩く」という過剰な刺激を与えてしまっています。内側からお薬で工場をなだめているのに、外側から指先でゴシゴシと工場を刺激して叩き起こしていれば、お薬の効果は相殺されてしまいます。
内服薬はあくまで「これ以上悪化させないための強力な補助(ベース)」。夏場などの紫外線が増える時期の悪化を防ぐためにも必須のアイテムですが、正しいセルフケアとセットで初めて意味を成すものだと理解しておいてください。
3. 「擦るな」じゃない、「触るな!」医師が勧めるアフターケアの裏ワザ
シミ取りレーザーの効果を100%発揮させ、数ヶ月〜数年続くような炎症後色素沈着を絶対に起こさないための鉄則は、極論を言えばたった一つです。
それは、「治療部位に絶対に触らないこと」です。
よく「擦らないでくださいね」と優しく指導されることが多いと思いますが、私はあえてもっと強く「触るな!」と言っています(笑)。
カサブタを無理に「浮かせよう」としていませんか?
レーザーを当てた後、カサブタが浮いてくると、気になって鏡をじっくり見たり、指先で触って「もう剥がれるかしら?」と確認したくなりますよね。この「気になっていじる行動」が、お肌にとっては最大の刺激になり、最悪の色素沈着を引き起こします。カサブタは、自然にポロっと剥がれ落ちるその瞬間まで、一秒たりとも触ってはいけません。
医療従事者が密かに勧める「キズパワーパッド(顔用)」の活用法
とはいえ、無意識に触ってしまったり、洗顔時や寝ている間に擦れてしまうのが心配な方も多いはずです。そこで当院が裏ワザとしておすすめしているのが、市販されている「キズパワーパッド(顔用)」を治療部位に貼ってしまう方法です。
基本的には、カサブタが自然に取れるまで「貼りっぱなし」にしておきます。これを行うメリットは絶大です。
- 遮光(紫外線ガード)が物理的にできる
- 洗顔やメイク、クレンジングの際の「摩擦・刺激」を100%遮断できる
- 触りたくなる指先から物理的に患部を守れる
シャワーやお顔を洗ったタイミングで、もし自然に剥がれてしまったら、新しいものに貼り替えてください。これだけで、レーザー後のお肌のダウンタイムの安全性は格段に跳ね上がります。
まとめ:シミ治療は「レーザーを打った後」からが本番です
シミ治療におけるレーザー照射は、プロセス全体のほんの半分に過ぎません。残りの半分は、治療後のお肌をいかに刺激から守り、炎症後色素沈着を乗り切るかという「患者様と私たちの共同作業」です。
基本的には、炎症後色素沈着が起きてしまっても、時間の経過(数ヶ月)とともに自然と薄く引いていくものがほとんどです。その期間を少しでも短く、きれいに早送りさせるために、私たちは適切なお薬やアフターケアのご提案をしています。
治療後の経過で少しでも不安なこと、気になる変化があれば、決して一人で悩んでいじったりせず、いつでもお気軽に当院へ経過を見せにいらしてくださいね。
「触らない、擦らない」を徹底して、誰もが羨む透明感のある素肌を一緒に目指しましょう!
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